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赤い疾風の残り香 -The Red Gale-

2010年08月02日 17:17

■3匹のモンスターのお茶会
7月30日(金曜)の午後18時過ぎ頃。
ショットガンをからかって遊んだついでという訳ではなく、8月1日の日曜から1週間の夏季休暇に入るツルピタも交え、ショットガンのお守りのお茶会を楽しんだ。だって、その次の週はショットガンが有休を使って1週間の沖縄旅行に出掛けてしまうのである。福岡事務所にはたった1週間だけとはいえ、おいらは1人ぼっちになってしまうのである。そりゃ、事務所の改装工事で工事関係のイカツイにーちゃん・おっちゃんが多数出入りしてくれるものの、顔見知りの人間が誰もいない状況は、人見知りが激しいおいらにとっては拷問以外の何ものでもない。んで、ショットガンと入れ替わりに夏季休暇を終えて職務に復帰するツルピタに、1週間毎日寂しく過ごすおいらの相手をお願いしようという訳なのである。ケーキセットと美味しいお茶を餌にツルピタを誘うと、ヤツは何も考えずに尻尾を振っておいらの下心満載な誘いに乗ってきた。けっけっけっ。
 
 
そうして3人で、今週火曜からショットガンと毎夕通い出したいつものカフェの、通りに面した窓際の席を陣取って、あーでもないこーでもないと雲雀の囀りの様に騒いでいた。
ショットガンは、自分が今まで見向きもせずに過ごしてきた今時の世俗・流行っている事について、どうすれば遅れを取り戻すように吸収する事が出来るかと、おいらとツルピタに聞いてきた。音楽や映画なんかについては、専門のTVチャンネルや番組があったり月間・週刊で発行されている専門誌があり、タウン情報についても専門誌やフリーペーパーが配布されている。それらの各種メディアに目を通せば簡単に情報を入手する事が可能であり、また今やネットでも簡単にそんな情報を見ることが出来ると、おいらとツルピタは教えてやったが、女性ファッションについてはおいらやツルピタのようなおやぢに聞く事自体が間違っている。
ショットガンってさ、旦那の帰りが急に遅くなった時とかさ、自宅に1人で居る時のそんな時間は何して過ごしてるの?」おいらはちょっと気になって聞いてみた。

ツルピタが興味津々な顔を向ける中、ショットガンは素直に「いつも本を読んでます。文庫本とか。本屋さんには時々通ってるんです。最近買った本は、今の会社の面接の前に、勉強しようと思ってパソコンの本を買いました。エクセルとワードの解説本も買いました。最初から最後まで読み切っても、時間がある時は何回でも目を通していますよ」と、笑顔を浮かべて言った。それを聞いたツルピタは、開いた口が塞がらなくなってしまったのか、暫くの間口を開けたまま固まっていた。
そんなツルピタを横目に見て、左手で頭を「バリボリ」と掻いた。ら、やっと瘡蓋が固まりかけていた頭部の裂傷傷を引っ掻いてしまい、ベローンと細長く大きな瘡蓋が剥がれておいらの額に「ツゥーッ」と血が垂れた。それを見たショットガンは「いやーっ!べるさん!血の、血の出とるばい!」と焦って叫んだ。その声を聞いたツルピタがやっと口が塞がったのか、正気に戻って「おいおい、よかか?きさん、よかか?」と、青い顔になって聞いてきた。おいらが「ちょっ!ごめん!救急車、救急車呼んでくりーっ!」と大声で言うと、ショットガンとツルピタはガタガタと慌てて携帯を、ショットガンはバッグをひっくり返して、ツルピタはスーツの内ポケットから、それぞれ取り出そうとした。


ツルピタが、焦って携帯を取り出そうとして手を滑らせ、食べかけのキルシュトルテに携帯を落下・埋没させてムンクの「叫び」状態に陥っているその横で、ショットガンは「119番、119番・・・」と呟きながらも、何回も携帯のダイヤルを押し間違えて「んもーっ!」と雄叫びを上げていた。
そんな2人の様子を見て、おいらはニヤつきながらカフェのナプキンで額の血を拭うと、「うっそぴょーん」と言ってみた。2人は「はあ?」という表情をおいらに向けたまま、暫くの間漬物石化した。先に我に返ったツルピタが、「きさんっ!性質の悪かぞっ!!きさんんんっっ!!!」と言って真顔で怒り、ショットガンは下を向いたまま「はぁ~、もーぉ、ビックリしたばい・・・ビックリしたばい・・・」とブツブツ言ってた。「ただ、固まりかけてた瘡蓋を剥しちゃっただけだよ。こんなの全然大した事がないんだけど、驚かせてごめん。」おいらがそう言って謝ると、ツルピタは「おいん携帯!」と言って生クリームを着飾った携帯をおいらの目の前に突き出し、ショットガンは「むーっ」と言っておいらを恨めしそうに睨んだ。
おいらは2人から視線を外して横を向くと、「いや~、このカフェのダージリンって、いつ飲んでも美味しいよねぇ」と言って紅茶が注がれたカップを手にすると、ズズズッと啜った。

ショットガンはおいらを睨みつけたまま「べるさんが頼んだん、アールグレイやん!」と言うと、毎度の如く両手でテーブルをバーン!と叩き、その音を聞きつけたいつものウェイトレスが、これまたいつもの仕事といわんばかりにやって来て、「毎日毎日大声で騒いで、他んお客に迷惑かかるっち言うてるやろう!」と3人は怒られ、3人仲良く頭を下げて「申し訳ございませぬ」と謝った。
しかしウェイトレスが戻っていくとおいらには再び地獄が待っていて、ツルピタに「きさん!きさんっ!!」と言われて睨まれ、ショットガンからも「べるさん!べるさんっ!!」と叫ばれ、襟首を掴まれ首を絞められそうになった。おいらは「きゅ~」と言ってちょっと可愛く苦しむ振りをしたが、そんな程度では2人の怒りは収まりそうになかった(当たり前)。
ショットガンがプリプリと膨れっ面で怒っているその横で、ツルピタは「初めてこん店に来よるんに、なして毎日騒いでっち怒られるんだ?なして?なして~っ!?」と、宙を仰いで叫んでいた。



■赤い疾風の残り香
おいらがこの空気をどうしたらいいか悩んでいると突然、ショットガンが外の通りの方を見て「カッコよかぁー」と、大きな声を出した。
ショットガンの声と視線に吊られて通りの方に顔を向けたツルピタが、「お、アルファやねぇ。カコよか」と言った。ショットガンは嬉しそうな表情で「運転手は女の人ですよ!」と言って、もう1度「カッコよか」と付け加えた。2人にすっかり出遅れてしまったおいらが慌てて外に目をやると、真紅のアルファ・レッドを身に纏ったALFAROMEO159が夕刻にざわめく通りの喧騒の中を、スーッと駆け抜けて行くのが見えた。
20100731_bl-AR_01
カフェの横の通りを静かに抜けていったアルファレッドを身に纏ったALFAROMEO159
サングラスにノースリーブの何かを身につけていたロングヘアーの女性がドライブしていた。そんなドライバーのセンスに合わせるかのように、静かにしかし空気をしっかりと引き裂くように、その残り香を華やかに撒き散らしながら、ゆっくりと通りの喧騒の中を抜けて消えていった。
画像はネットからの拾い物。念のため159本体以外の背景を加工してみたが・・・空の加工をし忘れていた。


おいらは"ALFAROMEOか・・・懐かしいな"と思いながら、「今時、外車を転がす女性は珍しくないだろ?でも、やっぱり159もカッコいいね」と言うと、ショットガンが喰い尽き気味に「159?アルファロメオじゃなかと?」と聞いてきた。
おいらは笑いながら、「159ALFAROMEO159という車名の車。ALFAROMEOの車だよ」と教えてやると、ショットガンはフムフムという表情で聞いていた。ツルピタはおいらの顔を眺めながら、「きさん、なして知っとうと?」と聞いてきて、ショットガンは何か良い事を思い出したという顔で「べるさんはアルファロメオに乗ってたんですよね?ブログの変なところに書いてあるのを見ました」と言った。おいらは、"変なところって一体どんなところだよ!"と思ったが、ツルピタは「金持ち~!」と言って笑っていた。

そんなツルピタに「DTMでALFAROMEを見たんだろ?」と聞くと、「見たとよ。凄かったたいね」と答えたその言葉を聴いて、「DTMより古くからALFAROMEOを知ってるファンの皆さんは、ALFAROMEOのコトを"アルファ"じゃなくて"ロメオ"と言うらしいぞ」と言ってやった。ツルピタは「くぬーぅ!」と言って、拳を振り上げ怒ったフリをし笑った。
そして世俗に疎いショットガンがなぜ、ALFAROMEOを知っているんだろうと何気に気になって聞いてみると、初めて父親の車に乗せてもらった、そんな遠い記憶が残っていると教えてくれた。父親の車は銀色だったが、ドアが2つで丸い四つ目の間に逆三角形の模様が入って、その模様の上の丸いボタンにはヘビと赤いプラスのマークが書かれていた事を頭の中のどこかに覚えていて、結婚してからその事を旦那に聞いてみたら"アルファロメオの車"と教えてくれたと言った。


~創業地・ミラノ市の白地に赤い十字架の市章とヴィスコンティ家の紋章であるサラセン人を呑み込む竜を組み合わせた紋章を頂く楯を表現した独特のフロントグリルを持つ~


この話は、ALFAROMEOファンなら誰もが知っている話である。
「さっき、ボタンと表現したモノは紋章(エンブレム)で、逆三角形の模様はその紋章を載せた盾を表してるんだよ」と、おいらはショットガンに説明した。ショットガンばかりでなく、ツルピタも「ほおほお」といった表情で聞いていた。「ついでに親父さんが乗っていたALFAROMEOはきっと、GT ベローチェという車種じゃないかな」と、"もっかいALFAROMEOに乗りてーなー"なんて考えながら、横を向いて話した。ショットガンはバッグの中をガサゴソと引っ掻き回してノートとボールペンを取り出すと、ノートに「あるふぁろめお じーてぃー べろーちぇ」と平仮名で書いてメモを取っていた。おいらとツルピタはその様子を覗き込み、「せめてカタカナで書けよ」と言って笑った。

ショットガンは「また笑った!」と言っておいらとツルピタをキッと睨むと、「べるさんが乗っていたアルファロメオの写真ありますか?」と聞いてきた。
「写真ねえ・・・自宅のPCのHDDに100枚くらい撮影したデータを残しておいたんだけど、おれが出張で家を空けた去年の夏にね、毎度のウチの親父が勝手にPC弄ってHDD壊しちゃって、ぜ~んぶ消えた。無と消えた」おいらがそう答えると、ショットガンは「・・・残念」と言ってガッカリしていた。おいらが「おれの乗っていたALFAROMEOとおまえの親父さんが乗っていたALFAROMEOは全く別の車種だし、そんなにガッカリしなくてもいいだろ?」と聞いてみると、「車の話になると、いつも父はニコニコして嬉しそうな顔をしていた記憶があって、べるさんはどんな顔をして乗っていたのかなと思って」ショットガンはそう話した。おいらは「ふ~ん」と思いながら「でも、おれが撮影した写真って、殆ど修理記録のような画像ばっかりだったよ」と笑って話すと、ショットガンはキョトンとし、ツルピタが「なして?」と聞いてきた。おいらは「壊れまくり。おれの貯金も無と消えた」と言って、言葉を続けた。


「中古だったけど、憧れの車をやっと手に入れて、嬉しい楽しいなんて思えていたのは、最初の半年くらい。5年半ほど乗っていたけど、残りの5年は苦痛の毎日。廃車にする頃には、ドライバーズシートに座るのも嫌になっちゃってたよ。でも、それでも今もおれにとっては、不思議とALFAROMEOは特別に思えたり。おれって、単細胞のアホかも知れない」と言って、おいらはまた笑った。
ショットガンが「どうして苦痛になったと?」と聞いてきた。「東京のディーラーで買って、自宅まで乗って帰ってきたその日の内に1発目のトラブルが発生。エンジンオイルがエンジン横のパイプから、ポタポタと凄い勢いで漏れてた。でもイタ車だし、こんなのもマイナートラブルの中の小さな1つさ!と言い聞かせつつ修理して乗っていたけど、完調の状態が1ヶ月と持たなくてね。壊れて修理に出しては却って来た愛車に乗り込んで、調子が良くなったと喜んでいても、3週間後にはどこかが壊れる。壊れては直し、壊れては直し、そんなカーライフに嫌気が差してきた」おいらは当時の事を思い返しながら、更に言葉を続けた。

「当時勤めていたトコロでね、仕事を終えて車に乗り込んでキーを挿して捻ってみたら、カチンという小さな音が聞こえるだけで、何度キーを捻ってみてもエンジンが掛からなくなったりね。これが一番青褪めたかな。1時間くらいやってたら掛かったから助かったけど。パーツ単価は高いしディーラーの工賃も高いし、車検も日本の同じ様な2LTB付の4駆車の3倍近い金が掛かったし。一番閉口したのが、変なパーツが逝っちゃうと、"イタリア本国から取寄せです、船便なので到着までに3ヶ月くらい要します"と、ディーラーが清ました顔で言ってくるところ。唯一助かった点は、乗って遠出しても帰りは積載車っていうのが無かった点かな。たまたまおれが買った固体だけが酷かったのかも知れないけどね」そう話して、おいらは笑った。
そんな話を聞いてツルピタが「最近、"痛車"っち良く聞くばってん、イタ車は痛車っち書くんかいな?」とか聞いてきて笑った。おいらは「最近は、日本製のパーツも使うようになって信頼性はあがったと、雑誌なんかに書かれているのを見かけるけどね」と言った。ショットガンは「どげんアルファロメオか、見たかったとよ」と言って、やっぱりまだまだガッカリしていた。


「明日も出社だし、ネットで検索かけておれが乗ってたALFAROMEOと同じ車種の画像を見せてあげるよ」とおいらが言うと、ショットガンは目をキラキラさせて「ほんなこつ?ありがとうございます」と言って喜んだ。



■赤い疾風の残り香 2
7月31日(土曜)の午前9時前。
おいらは既にPCを立ち上げネットで検索し、ALFAROMEO155Q4と159の画像の何点かをデスクトップに保存して、ショットガンの出社を今か今かと待っていた。その内、事務所の中に「おはようございます」という声が響いて、いつもの様にショットガンが出社してきた。おいらは「ショットガンおはよう、ちょっとこっちにおいで」とショットガンを呼び寄せて、デスクトップに保存しておいた画像を開いて見せた。
久し振りに見る元愛車と同じ姿の車の画像を目にして、おいらは嬉しくなってきて喋り捲った。「これがおれが乗っていたのと同じ車種のALFAROMEO155Q4の画像でさ~、おれはこんな風にモデファイしたかったんだけどねー、金がねー、しくしく。これはドイツのDTMに参加し活躍していたレースマシンのALFAROMEO155V6tiの姿でねー・・・」。
ショットガンは横の席に腰掛けニコニコしながら「父と同じやね」と言ったらしいが、おいらは過去の残り香に身も心も躍り過ぎていて、何も聞こえてこなかった。


20100731_bl-AR_02おいらの以前の愛車のALFAROMEO155Q4。初期のナロー。
おいらが残しておいた愛車の画像は実家の親父のおかげで全て消えてしまった。ので、この画像もネットに落ちていた物を拝借。勝手に転載申し訳ないです。
上下の大き目の画像は同じ個体の前後を写したもの。アルミは(多分)OZ製に履き替え、前後バンパーのウレタン部の黒塗装をボディーと同色のロッソ・コルセに塗り替えている。マフラーも当時人気だったDTM仕様のANSAかUNICORSEの製品に変えられている。
中央右よりの小さな画像がオリジナル状態の155Q4を前から写した画像。同じロッソ・コルセでも、出荷時期によってこれだけ色が違って見える。日本車では考えられない仕様(笑。
ALFAROMEO155Q4は、ランチア・デルタに搭載されていた鋼鉄製2L直4エンジンTB付のユニットをデチューンしたものを搭載。


20100731_bl-AR_03おいらは愛車をこう変えたかった・こうしたかったの見本画像。
左上は食玩のオマケのALFAROMEO155V6ti/93年仕様でおいら所有品。
右上はネットからの拝借画像で、前出の食玩の別シリーズのオマケだった155V6ti/94か95年仕様。
下はALFA ROMEO本社敷地内にあるALFA ROMEO MUSEO(ミュージアム)内に展示されている155V6ti/最終年度(96)仕様。
おいらが155Q4を購入した年くらいに車検対応可能で簡単に外装を155V6ti化出来るエアロパーツが安価で販売された。それを購入して右上画像の166V6tiの様に仕上げるつもりだった。が、おいらの155Q4はやたら壊れてくれて金が無くなり、結果、ドアミラーをカーボン製のDTM仕様品に交換しただけで終わってしまった。



20100731_bl-AR_04
今でも涙ちょちょ切れな、ALFAROMEO155V6tiのカッコ良すぎる後姿。まさに"火を噴くモンスター"。
これは何年か前に発売されたPS2のゲームタイトル"GRAN TURISMO 4"のムービーの一場面。DTMにALFAROMEOが参加していた当時、ALFAROMEだけでなくBENTZやOPELのマシンも、ブリッピングの度にエグゾーストから強烈な炎-バックファイヤーを撒き散らしながら走っていた。特にALFAROMEOのマシンは、エグゾーストのエンド部を上方に向けていた為、噴き上がるバックファイヤーの炎は凄かったしカッコよくも見えた。

ドイツ国内のツーリングカー選手権として1984年から開催されたDTMは、ALFAROMEOがいきなり年間タイトルをさらった1993年からレギュレーションが変わって、F1とほぼ変わらないハイテクシステムで武装されド迫力なエアロを身に纏った4駆ターボマシンの闘いの場となっていく。年々物凄い勢いで高まっていく人気に比例するかのように、参加メーカーは自らの威信を賭けて急激に高騰していく開発費を負担・投入し、DTMは運営され続けられた。その人気に目をつけたFIAのテコ入れにより、95年はITC(国際ツーリングカー選手権)と平行して運営され、翌年の96年にはFIAの目論見通りにITCに統一されて開催された。が、留まる事を知らない開発費に参加メーカーが撤退してしまい、恐ろしいほど過激なマシンが繰り広げるこのレースは、96年を最後に終焉を迎える。

このムービーの様な走りを再現したくて、その為だけにGT4を買った。GT4が販売された当時のCMにも、短い時間だったがその雄姿が流れていた。しかしおいらは未だそのシーンを再現出来ていない。GT4はPS2本体と共に、クローゼットの奥深くに眠り続けている。
from "GRAN TURISMO 4"/(C)SCEI



1人でしゃべり続けている内に、喉が痛くなって我に返った。
おいらの隣の席では、興味はあっても全く理解できない話を聞かされ続けたショットガンが、いつの間にか机に突っ伏して「くー、くー」と小さな寝息を立てて居眠りしていた。顔を隠している前髪をちょっと指で退けてみると、子供の様な安心しきって表情で居眠りこいてるショットガンの顔が、少しだけ見えた。
「ほーんと、まだまだ子供だよな」おいらは独り言を呟くと、うっひっひっと不気味に笑いながらホワイトボードの前に移動した。ホワイトボードのマーカーで、居眠りこいてる小娘の顔に悪戯書きをしてやろうと考えたのである。しかし、マーカーのキャップを外して悪戯書きをしようとした瞬間、おいらの命の灯火をショットガンに掻き消される様な悪寒が走った。
-・・・やっぱやめとこ。
マーカーにキャップを被せホワイトボードに戻そうとしたその時、事務所のドアが「ドカン」と開いて血の気が引いたおいらは「ひゃーっ」と身体で叫んだ。

こんなタイミングでどこのボケだ!とドアの方に目をやると、ツルピタが「ちゃお~♪」とか言って立っていた。博多湾に沈めるぞ!コンニャロウと、一瞬殺気立ってしまったおいら。
おいらは慌てて「静かにしろ」とジェスチャーを送り、机に突っ伏して居眠りこいてるショットガンを指差した。ツルピタはおいらの悪戯心を察してくれた様で、右手で「OK」と返してきた。それを目で確認すると、机の上のティッシュBOXからティッシュを1枚手に取った。やっぱり今度もうっひっひっと笑いながらティッシュを小さく捩ってコヨリを作っていると、ツルピタもいっひっひっと笑っていた。おいらは自分のちょっと先の不幸な未来を想像してドキドキしながらも、コヨリをショットガンの鼻に差し入れてコショコショしてみた。ドッキドキですばい。
「・・・くっひゃんっ!」
事務所の中に女性特有の可愛いくしゃみが響き渡った。おいらとツルピタは声を出して笑ったが、ショットガンは寝ぼけて辺りをキョロキョロしていた。おいらはショットガンの目の前に両手をついて、「こりゃー!ショットガーンっ!!専務との大事な打合せ中に、何居眠りこいてんだーっ!!!」と、言ってみた。


ショットガンは目をパチクリさせて、「え?え?専務さん??あい?アルファロメオは?え?え?」と、目を擦りながら寝惚けた言葉を発した。
おいらはニヤニヤしながら「ショットガン!しっかりしろよ!いつまで寝惚けてるんだ!」と言うと、ショットガンは不安げな表情に変わって「専務さん・・・ど、どこやか?」と聞いてきた。おいらは「さっきからそこにいらっしゃるぞ!」と言ってホワイトボードを指差した。ホワイトボードの前には、上着とカッターを脱ぎ腹を出して体操をしているツルピタがいた。その腹には黒のマーカーで"専務です"と書かれていた。
ショットガンは目を大きく開いたまま、「え?専務さん?え?え?・・・何しようと?え?ツ、ツルピタ??」と言いながら3分ほど固まっていた。が、やっと状況が飲み込めたのか、「くっくっくっ」と笑い出した、かと思いきや、ホウキを手に取り振り回しながら、今日もおいらとツルピタを追い回した。おいらが想像してしまった"ちょっと先の不幸な未来"の予感は的中し、今日もショットガンはとても恐ろしゅう御座いました。

やっとショットガンがおいら達を追い回すのを諦めて、3人で「ゼェー、ハァー」と息を荒げている中、おいらはショットガンに「ゼェー、ゼェー、ショ、ショットガン、ちょっと、ちょっとこっちに、来て、み。ゼェー、ハァー」と言っておいらの席に呼んだ。
ショットガンはホウキをロッカーにしまうと、息を整えながらこっちに来た。「この2つの内のどっちかに乗ってたんじゃない?親父さん」とおいらが言うと、ツルピタも一緒に画面を見入った。ショットガンは暫くの間画面を眺め続けていた。おいらがネットで拾ってきたALFAROEOの2車種の画像はどちらもボディーカラーが真紅のロッソ・コルセだったため、きっと頭の中で、画像の車体色を記憶に残っていた父親の車の色-銀色に塗り替え、どちらの車体だったか思い返していたに違いない。


20100731_bl-AR_05_011969年製のALFAROMEO GT/Veloce。
おいらの今までの人生の中で、実際に走っている姿を見かけた事があるGT/Veloceは、シルバーか白、もしくはイエローのボディーカラーを身に纏った固体ばかり。
外観がどことなく似ている丸目2灯のGiulia(GT系)は、芸能人の加藤浩二が白ボディーを所有していて、自身が出演しているお笑い番組の中で壊されてしまうシーンが放送されたことがある(記憶違いだったらスイマセン)。


20100731_bl-AR_06_011976年から追加されたAlfetta 2.0GTV/後期型。
Alfettaは野心的なシャシー設計とパワートレーンにトランスアクスル方式を採用し、車の理想とされる前後50:50の前後重量配分を実現したモデル。この凝った造りがシャープなハンドリングとズバ抜けた安定性を生み出したが、逆にその造りが仇となって、現在保有しようものなら湯水のように金が出て行く事を覚悟しなければならない。平民にはとても保有・維持していく事が出来ない、色んな意味でスンゲー車。



画面に穴が開くんじゃないかという雰囲気で画像を見つめ続けているショットガンの横顔を、ツルピタと二人で暫くの間眺めていた。
その内ショットガンは微笑んで、「こっち。父の車はこっちばい」と言って、画面に映っていた画像の中のGT/Veloceを指差した。おいらが「ほほお」と頷いたその横で、ツルピタが「アルファロメオっち感じん車やね」と言い、おいらはもう1度頷いた。おいらもGT/Veloceの画像を眺めて「いい趣味してるな~」と言うと、ショットガンは嬉しそうな顔をして「この画像貰ってもよか?」と聞いてきた。おいらは「個人で眺めてる分には問題ないから、自宅PCのメルアドにメールに添付して送っておけば?」と、答えておいた。
おいらはGT/Veloceの画像に視線を戻すと「おれもこれか、もう少し初期の"段つき"を買っとけば、嫌になってALFAROMEOを廃車にする事も無かったかもな」と、思わず言葉が出てしまった。ショットガンとツルピタは声を合わせ2人で「なして?」と聞いてきた。

おいらは2人の顔を見て「んー、エンジンルームはスカスカで今の車みたいに電子デバイスも積んでない。おまけにオーソドックスなFRレイアウトで整備しやすいから、工賃も安く済みそうだしね。それに、今や色んな個人ファクトリーが安価にパーツを作ってくれているから、パーツ代も155Q4ほどかからずに済みそうだし。155もアルファ伝統のV6や2LのTS(ツインスパークエンジン)を載せてた車種は結構出回っててパーツも入手し易かったようだけど、当時Q4はタマ数も少ない上に4駆レイアウトで整備に手間かかったし、エンジン周りのパーツはランチアのパーツだから入手に時間と費用も要したしね。でもま、V6やTS、Q4と、どれも長短はあったみたいだけど」と、答えると、ツルピタが「なして、Q4にしたばいと?」と聞いてきた。おいらが短く「4駆TBだったから」と答えると、ツルピタは「そいだけ?」と、また聞いてきた。おいらは博多弁を真似て「そいだけ!」と答えた。そしてショットガンに目をやると理解不能な単語に眠気を感じてか、立ったままうつらうつらとしていた。


おいらはショットガンの頭をポンと叩いて、「なあ、ショットガン。おれ、今欲しくてたまらない車があるんだけど、買ってくれない?」と言って銀色に怪しく光り輝く159の画像を開いた。
20100731_bl-AR_07
ALFAROMEO159 J4 2.2 Compressore by AUTODELTA
2006だったか08年に、チューンドメーカーのAUTODELTAが発表したモデル。個人的にリアスポイラーから左右に振り分けて突き出す4本のエグゾーストがちょっと頂けないが、それでもカッコよす!Compressore=過給機(TB)を搭載し、更に気持ち良くエンジンをブン回せる仕様。と言っても、日本車の同じ排気量のFFマシンよりかはスペックがやや控えめ。しかしやはりBMW(キドニーグリルにエンブレム)なんかもそうであるが、フロントマスクに"ウチの製品ですよ"と謂わんばかりの盾をあしらった、ALFAROMEOという車に憧れてしまう。そんな古臭い小さな拘りを、工業製品としてちゃんとデザインを盛り込み成り立たせてしまう、そんな所においらは憧れを抱いているのかも知れない。


ショットガンは眠気で頭が回らないのか、「買ってあげるけん、幾らするとよ?」と言った。
おいらはニヤニヤしながら「600万とか800万の間くらい。ホントに買ってくれるの?」と聞いてみたが、金額を聞いて目が覚めたのか、ショットガンはおいらを睨むと「子供んおもちゃじゃなかっ!」と言って怒ると、自分の席に戻って仕事をし始めた。おいらとツルピタは、そんなショットガンを見ながら笑っていた。


3人で昼食を摂った後、「ちょっと仕事」と言って自分の勤め先に戻ろうとするツルピタに「今日も夕方顔を出せよ」とお茶会に誘い、今夕もいつものカフェで3人は雲雀の様に騒いで、いつものウェイトレスに怒られた。
その内、出入り禁止喰らうんじゃないか?と3人でヒソヒソと話しながらカフェを後にしたが、ホテルの部屋に戻ってからツルピタに翌週のおいらのお守りを頼み忘れていた事を思い出し、おいらは慌ててツルピタの携帯を鳴らした。が、「お客様がおかけになった電話番号は、現在、電波が届きにくいところか、電源が切られています。留守番電話サービスに接続・・・」と、冷たいアナウンスが繰り返されるばかりなのであった。
おいらは"おれの周りにいる連中って、どうしてそう、すぐに携帯の電源を切りやがるんだ"と考えつつ、ツルピタの携帯の留守電サービスに「お前の秘密を知っている」と、一言用件を入れると携帯を切ってベッドに横になった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



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